天照大神|太陽神にして日本の母、すべての神社のトップ

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「日本でいちばん有名な神様は?」と聞かれて、まっさきに思い浮かぶのが天照大神(あまてらすおおみかみ)ではないでしょうか。太陽みたいにキラキラ輝いて、神社のトップに君臨する女神様。お札の図柄でも、伊勢神宮でも、教科書でも、とにかく登場頻度が高い。

でも、いざ「アマテラスってどんな神様?」と聞かれると、案外うまく答えられない人も多いはず。実はこの女神様、めちゃくちゃ激しい一面があったり、岩のすき間に隠れて世界を真っ暗にしてしまったり、孫を地上に送り込んで「日本を任せた!」と宣言したり……エピソードがどれも濃い。今回は、そんな天照大神の素顔をエンタメ全開でお届けします。

名前の意味とルーツ

「天照大神」と書いて「あまてらすおおみかみ」と読みます。古事記では「天照大御神」、日本書紀では「天照大神」と表記されますが、意味はそのまま「天を照らす偉大な神」。太陽そのものを神格化した存在で、日本神話における最高神とされています。

立場としては、国生み神話で有名なイザナギ(伊邪那岐命)から生まれた三貴子(さんきし)の長女。三貴子とは、アマテラス・ツクヨミ(月読命)・スサノオ(須佐之男命)の三柱を指し、イザナギが「自分が生んだ神の中で、もっとも貴い三柱」と認めた特別な神々です。長女として高天原をまかされ、弟たちには夜と海原がそれぞれ託されました。神話世界の三兄弟、その長として君臨するのがアマテラスというわけです。

さらにアマテラスは皇祖神(こうそしん)、つまり天皇家の祖先神とされています。神話の世界では「神様のトップ」、現実の世界では「天皇家のルーツ」――この二つを兼ねている時点で、もう別格の存在なんですね。

天照大神(河鍋暁斎)
写真:天照大神(河鍋暁斎 c.1870)・パブリックドメイン

誕生秘話

アマテラスの誕生シーンは、神話の中でもインパクト絶大。舞台は、亡き妻イザナミを追って黄泉(よみ)の国まで行ったイザナギが、地上に逃げ帰ってきた直後のこと。死の穢(けが)れを落とすために、九州・日向(ひむか)の海で禊(みそぎ)を行います。

水の中でジャブジャブ体を清めるイザナギ。すると、洗った部位から次々と神様が生まれてきます。そしてクライマックス、左目を洗ったときに生まれたのが天照大神。続いて右目を洗うとツクヨミ、鼻を洗うとスサノオが誕生します。これが「三貴子の誕生」と呼ばれる名場面です。

三貴子の中でも、アマテラスは最初に生まれた長女。イザナギは大喜びで、首から下げていた首飾りをアマテラスに授け、「お前は高天原(たかまのはら)――つまり天の世界を治めなさい」と命じます。生まれた瞬間に世界の支配権を渡される。新人離れしたデビューです。

意外な逸話・特徴

太陽神でみんなを照らす優しい女神様……というイメージで止まっているともったいない。アマテラスのエピソードは、けっこうワイルドです。

◆ 天岩戸(あまのいわと)隠れ事件
もっとも有名なのが、弟スサノオの暴挙にブチギレて岩屋にこもってしまう「天岩戸隠れ」。スサノオは高天原を訪れると、田んぼのあぜを壊し、神殿に汚物をまき、極めつけは機織りの部屋に皮を剥いだ馬を投げ込むという大暴れ。これで織女が亡くなってしまい、アマテラスは恐れと怒りで岩屋に引きこもります。

太陽神がいなくなった世界は当然真っ暗。あらゆる災いが噴き出します。「これはまずい」と集まった神々が知恵を絞り、編み出した作戦が……。

◆ 天宇受売命(あめのうずめのみこと)の伝説的ダンス
芸能の女神アメノウズメが、岩戸の前で桶の上に乗って踊り狂う。神々はそれを見て大爆笑、宴会は最高潮に。岩戸の中のアマテラスは「あれ?私がいないのに、なんでみんなあんなに楽しそうなの?」と気になり、岩戸をそっと開けます。

その瞬間、神々が差し出したのが八咫鏡(やたのかがみ)。鏡に映った自分の姿を「もう一柱の貴い神が現れた」と勘違いして見入っているスキに、力自慢の天手力男神(あめのたぢからおのかみ)がアマテラスの手を取り、岩戸から引っ張り出す――。こうして世界に光が戻りました。神々の知恵と笑い、そして鏡というアイテムが世界を救う、神話史に残る名場面です。ちなみに、このときアメノウズメが踊ったしぐさが、後の神楽(かぐら)の起源になったとも言われています。

◆ 天孫降臨の司令塔
地上の世界がゴタゴタしていると知ると、アマテラスは孫の邇々芸命(ににぎのみこと)に「地上に降りて、ここを高天原のような素晴らしい国にしなさい」と命じます。このとき授けたのが、八咫鏡・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・草薙剣(くさなぎのつるぎ)の三種の神器。今も皇位継承の象徴として受け継がれている、あの神器のオリジナルです。さらに「この国は天地と共に永遠に栄える」と告げた「天壌無窮(てんじょうむきゅう)の神勅(しんちょく)」は、日本国と皇室の永続を約束する有名な宣言として伝わっています。神話の中で「日本という国のはじまり」を決定づける、最も重要なシーンといっていいでしょう。

◆ 実は怒り狂う激しい一面
岩戸に隠れたり、弟と一触即発の誓約(うけい)をしたり、激しい感情の起伏を見せるのもアマテラスの魅力。優雅な太陽神というより、「キレるときはキレる、笑うときは笑う」、感情豊かな女神様です。

◆ 男神説という大論争
意外と知られていませんが、アマテラスには「実は男神だったのでは?」という説が江戸時代から議論されてきました。江戸期の伊勢神道学者・度会延経(わたらいのぶつね)は、内宮近くの荒祭宮(あらまつりのみや)の祭神を「アマテラスの后神」と推測し、男神説を唱えています。世界的に見ても太陽神は男神が多く(ギリシャのアポロン、エジプトのラーなど)、円空が彫った天照大神像も男性の姿。決着はついていませんが、知れば知るほど奥深い神様なのです。

祀られている神社

アマテラスを祀る神社は全国に無数にあります。中でも別格なのが、誰もが知るあの場所――

◆ 伊勢神宮 内宮(皇大神宮)/三重県伊勢市
日本の神社の最高峰。御祭神はもちろん天照大御神。約2,000年前、垂仁天皇の御代に五十鈴川(いすずがわ)のほとりに鎮座したと伝わります。宇治橋を渡り、玉砂利の参道を進めば、そこはもう神域。神宮には正宮のほか、荒祭宮・風日祈宮(かざひのみのみや)といった別宮があり、全部めぐると一日では足りないほど。

参拝の作法は「外宮(豊受大神宮)→内宮」の順が古来からのならわし。神宮の杜の空気感は、一度行くと忘れられません。公式:伊勢神宮 公式サイト

◆ 全国の神明神社・天照系神社
「神明神社」「皇大神社」「天祖神社」などの名前を見かけたら、たいていの場合は天照大神を祀る神社です。伊勢神宮の御祭神を勧請(かんじょう)して各地で祀ったもので、その数は全国で18,000社以上とも言われます。皇祖神という性格から、宮中三殿の一つ「賢所(かしこどころ)」にも八咫鏡が奉安されており、天皇家との結びつきは今も生きています。

◆ 参拝のポイント
伊勢神宮内宮は年中無休、参拝時間は季節によって変動(おおむね5時~18時前後)。御朱印は質素な「印のみ」スタイルで、神宮らしい凛とした雰囲気が魅力です。混雑を避けるなら早朝参拝が断然おすすめ。朝の五十鈴川の清らかさは、一生モノの体験になります。また、20年ごとに社殿を建て替える「式年遷宮(しきねんせんぐう)」もアマテラス信仰の象徴。常に新しく、常に清らかであり続ける――そんな日本人の美意識が、神宮には凝縮されています。

関連記事

  • イザナギ(伊邪那岐命)――アマテラスを生んだ父神。国生みの主役。
  • スサノオ(須佐之男命)――アマテラスの弟。岩戸隠れの引き金を引いた問題児。
  • ツクヨミ(月読命)――アマテラスの弟で、夜の世界を治める月の神。
  • 天孫降臨――アマテラスの孫・邇々芸命が三種の神器を携えて地上に降りた一大イベント。
  • 神武天皇――邇々芸命のひ孫にあたる、初代天皇。アマテラスの直系子孫。

関連神社|天照大神を祀る・一緒に祀られる神社

主祭神として祀る神社

◆ 伊勢神宮 内宮(皇大神宮)/三重県伊勢市
言わずと知れた日本の神社の最高峰。御祭神は天照大御神そのもので、三種の神器のひとつ八咫鏡を御神体とします。20年に一度の式年遷宮で常に瑞々しい姿を保ち続ける、唯一無二の聖地です。公式:https://www.isejingu.or.jp/

◆ 元伊勢内宮 皇大神社/京都府福知山市
天照大御神が伊勢に鎮まる前に一時的にお祀りされたと伝わる「元伊勢」のひとつ。黒木の鳥居と茅葺神明造の社殿が、創建当時の素朴な姿を今に伝えます。公式:http://motoise-naiku.com/

◆ 全国の神明神社・天祖神社
「神明神社」「皇大神社」「天祖神社」と名がつく神社は、ほぼ天照大神を祀っています。伊勢神宮の御祭神を勧請したもので、全国で18,000社以上。日本でいちばん祀られている神様のひとりです。

一緒に祀られる関連神社(三貴子・天孫降臨系)

◆ 伊勢神宮 別宮 月讀宮/三重県伊勢市
内宮の別宮で、弟神・月読尊を祀ります。境内には月讀宮・月讀荒御魂宮に加え、両親神である伊佐奈岐宮・伊佐奈弥宮も並び、いわばイザナギ家族の聖域。アマテラスの「家族」がそろう貴重な場所です。参考:伊勢神宮 域外の別宮

◆ 戸隠神社 中社・宝光社/長野県長野市
天岩戸神話の立役者である思金神(中社)・天表春命(宝光社)を祀り、奥社には岩戸をこじ開けた天手力雄命が鎮座。アマテラスを「岩戸の中から引き戻した側」の神々が集う一山五社の霊地です。公式:https://www.togakushi-jinja.jp/

◆ 高千穂神社/宮崎県西臼杵郡高千穂町
天孫降臨の地・高千穂に鎮座し、アマテラスの孫瓊瓊杵尊とその子孫「日向三代」を祀ります。アマテラスから国を託された一族が眠る聖地です。

全国の関連神社(地域別)

天照大神(アマテラス)を主祭神、または合祀する代表的な神社を地域別にご紹介します。

■ 北海道・東北新川皇大神社(北海道札幌市北区)――伊勢神宮の内宮・外宮から天照大御神と豊受大御神を勧請。北海道で「皇大神社」の社号を許されている唯一の神社です。公式:https://shinkawakoutai.net/history/
新琴似神社(北海道札幌市北区)――屯田兵守護神として明治20年に創建、天照皇大神を主祭神とする。札幌市内だけで約30社が天照大神を主祭神として祀っています。

■ 関東東京大神宮(東京都千代田区)――天照皇大神・豊受大神を主祭神とする「東京のお伊勢さま」。明治13年創建の神宮遥拝殿が起源で、首都圏の伊勢信仰の中心地です。公式:https://www.tokyodaijingu.or.jp/

■ 中部伊勢神宮 内宮(皇大神宮/三重県伊勢市)――日本人の総氏神天照坐皇大御神をお祀りする全神社のトップ。125の宮社からなる「神宮」の中心。公式:https://www.isejingu.or.jp/about/naiku/
静岡県内では、伊勢神明社(静岡県静岡市駿河区小鹿886)が文禄元年(1592年)創建と伝わる代表的な天照系神社。公式:https://www.iseshinmeisha.com/
また富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)は天照大神の孫・瓊瓊杵尊の妃・木花之佐久夜毘売命を主祭神とし、富士山そのものを御神体とする全国浅間神社の総本宮で、アマテラスから連なる天孫の家系を体感できる聖地。公式:http://www.fuji-hongu.or.jp/

■ 九州・沖縄天岩戸神社(宮崎県西臼杵郡高千穂町)――天照大神が隠れた天岩戸の伝承地で、西本宮・東本宮ともに天照皇大神を主祭神とし、岩戸(洞窟)を御神体とする神話の聖地。公式:https://amanoiwato-jinja.jp/
霧島神宮(鹿児島県霧島市)――天照大神の孫・瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)を主祭神とする天孫降臨の聖地。本殿は国宝に指定されています。公式:https://kirishimajingu.or.jp/history/

まとめ

天照大神は、ただの太陽神ではありません。日本という国の起源を物語る母であり、すべての神社のトップに立つ最高神。岩戸に隠れて世界を闇に落とすほどの激情を持ち、孫を送り出して国を託す決断力もあり、感情豊かでドラマチック。だからこそ、2,000年経ってもみんなに愛され、祀られ続けているのでしょう。

伊勢神宮を訪れる機会があったら、ぜひ「あの岩戸の中にいたのは、この神様なんだ」と思い出してみてください。神話のキャラクターたちが、急に身近に感じられるはずです。

参考

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